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2016年9月13日(火) フジバカマ

今月後半のテーマ花材は秋の七草のひとつ、フジバカマです。

科 名 キク科ヒヨドリバナ属 多年草 
学 名 Eupatorium japonicum(Eupatorium fortunei)
英 名 Thoroughwort、 Boneset
和 名 藤袴(フジバカマ)、香草(カオリグサ)、沢蘭(サワラン)
原産地 日本、中国、朝鮮半島
花 期 8〜11月
出回期 8〜9月(旬 9月)
水あげ 水切り、湯揚げ、燃焼法 水あげはあまりよくないが、あがれば長保ち
花 色 藤色、白
花の形態 フィラーフラワー

花言葉の「ためらい」「遅れ」は、
フジバカマの小花が少しずつ咲いていくことにちなむといわれます。

【秋の七草】
春の七草は食べて無病息災を願うものですが、
秋の七草は眺めて目で楽しむもの。
「万葉集」で山上憶良が詠んだのがゆえんとされています。

萩(ハギ)、尾花(オバナ ※ススキ)、葛(クズ)、撫子(ナデシコ)、
女郎花(オミナエシ)、藤袴(フジバカマ)、桔梗(キキョウ)

【名前の由来】
藤色の花を咲かせ、花の形が袴(はかま)に似ていることに由来。
また袴は「帯びる」という意味ももち、
芳香あるこの花を身に付けて邪気を払うという意味もあります。

生乾き状態のものは独特の甘い芳香を放つところから
中国では「蘭草(らんそう)」、「香水蘭(こうすいらん)」とも呼ばれ、
「蘭」はもとはフジバカマを指す漢字だったそうです。

【歴史】
日本には奈良時代に中国から渡来しました。
秋の七草として知られ、山上憶良によって「万葉集」にも詠まれ親しまれてきました。

 万葉集/秋の七草「萩の花 尾花 葛花 瞿麦の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花(万葉集・巻八 1538)

 源氏物語/夕霧は玉鬘に藤袴を差し出して
 「おなじ野の露にやつるゝ藤袴あはれはかけよかことばかりも」と詠いかける。
 「むらさきのふぢばかまをば見よと言ふ二人泣きたきここち覚えて 晶子」(与謝野晶子の『源氏物語』訳)

以前は日本各地の河原や野原などに自生していましが、
護岸工事や宅地造成など戦後の急激な開発により開発などで、
日本の原産種である「エウパトリウム・ヤポニクム」はほぼ絶滅に近い状態だといわれ、
野原に群生しているものはみられなくなりました。

観賞用として販売されている「フジバカマ」のほとんどが同属他種または本種との雑種だそうです。

【花】
花は茎の先に淡紫色や濃紫色や白などの小花を傘状にたくさん付けます。
糸のような細い雌しべが突き出た花の風にそよぐ姿は風情があり、
茶花や生け花には欠かせない花材でよく利用されています。

横に伸びる地下茎を持ち、そこから茎を長く伸ばして夏から初秋に淡紫色の花をたくさん咲かせますが、
栽培品種は従来の野生種に比べると赤みが強い。
草丈は1m~2mになる大型の草花です。
花後はタンポポのような白い綿毛をもったタネができ、風によって遠くへ運ばれます。

【葉】
まっすぐな茎に、3つに深く切れ込んだ葉が対になってついています。
ひとつの葉が3つの別の葉のように見えて、元はひとつの葉になっています。

【香りと用途】
生草のままでは無香ですが、乾燥するとその茎や葉が桜餅の葉のような芳香を放ち、
平安時代の女性は干した茎や葉を水に浸けて髪を洗ったそうです。
奈良時代には利尿、解毒の薬草として使用していた、
防虫剤、芳香剤、お茶、香草に用いられていたともいわれています。

中国では「香水蘭」と呼ばれ、匂い袋として用いられていました。
またこの香に惹かれ、虫たちも盛んにやってきます。


<POINT>
・葉はあまり間引きせず、傷んだものを取除くくらいでそのままの風情を活かします。
・ススキなど季節(秋)の花材とあわせるとしっくりきます。
・郷愁を誘う花姿を活かして和風で使われることが多い花材ですが、
 パリスタイルなどの洋風のアレンジにも使えます。


yoshimi furuya


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